彼が虚勢をはる理由
よん。
体育の授業がある日。
その日も、夏野君は十分くらい遅刻してきた。
担任から注意されてるにも関わらず、どうやら夏野君は懲りてないらしい。
これじゃ夏野君は、本当に停学や退学になっちゃうよ。
「香苗、夏野君はどう?」
「あ、優美」
体育の授業の前、体育館で私が準備してると、一緒に授業を受けてる風見優美(カザミ ユミ)が声をかけてきた。
優美は一年の頃、私と同じクラスだったんだ。今は隣りのクラスで、体育の授業だけ一緒に受けてる。
…だけど、私は優美に、夏野君が転校してきた話をした記憶が無い。
何で知ってるんだろう? 他の誰かから聞いたのかな?
「優美、夏野君を知ってるの? 私、夏野君のコト話してないよ」
すると優美は、驚いたように私を見た。
「私、夏野君と同じ中学なんだよ」
「はぁ!?」
知らなかった。
じゃあ夏野君は、中学の頃はこの地域に住んでたっていうの?
…そういえば。転校してきた初日、担任がそんな説明をしてた気がする。
で、親の仕事の都合で、関西に行ってたとか。
「夏野君、中学卒業まではこっちに居て、高校進学と同時に関西に引っ越したんだよね。でも、戻ってきたっていうから」
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