彼が虚勢をはる理由
あんな恥ずかしいのを!? 私を恥ずかしさで生殺しさせるつもりか!?
しかも、発言が俺様! 上から目線! さっきまでは夏野君だって、顔を真っ赤にさせて、あんなに余裕が無かったくせに。今は余裕綽々じゃないの。
私は怒り半分、恥ずかしさ半分といった気分で、夏野君が買ってきてくれたドリンクを飲む。
よし、惚れた弱み、やってやろうじゃないの。
緊張でドリンクの味が分かんなかったけど、この際どうでも良い。
私は右手を差し出し、そのまま夏野君を強く見つめた。
一度はドリンクで冷ました顔の温度が再び上がった気ぃするのは、……たぶん気の所為じゃない。
そのまま口を開く。
「……宜しく御願い、します!」
すると、夏野君のニヤニヤ笑いは止まり、何故か驚いたような顔になって、こちらを見つめ返された。
ファーストフード店の喧騒の中でも、夏野君の呟きが小さく聞こえる。
「…本当にやってくれるとは思わなかった」
…コイツ、私が嫌がるだろうっての分かってて言ったんだな。ふざけるな。
また少し怒りを覚えた私は、差し出している右手を再び下ろそうとする。
しかし今度は、私が驚く番だった。
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