彼が虚勢をはる理由
「まぁ、基本的には俺には関係無いしな。普段は女子の名前とか、絶対に呼ばないし。でも、好きなヤツの名前くらいは覚えてるっしょ」
「う……」
その陽一の、硬派そうな感じの中に胸キュンが混じった返事に、私はまた悶絶する。
何でこんな照れ臭い事を、サラッと言えちゃうのかな? 私は妙に恥ずかしくて堪らない。
「だからこそ、香苗にも、俺のコトを名前で呼んで欲しいわけ。これからも。俺も呼ぶから」
陽一の言ってる事に筋が通ってるからこそ、照れくささに拍車がかかる。
これからも…か。私はこの恥ずかしさに、いつ慣れる事が出来るんだろう?
……というか、夏野君は何で、私の名前がスンナリ出てきたんだろう? "好きなヤツの名前くらいは覚えてる"って言ってたけど、恥ずかしさに負ける事無く、こんな簡単に私の名前が呼べたのは何故?
「ねぇ、な……陽一は、恥ずかしくないの?」
「何が?」
恥ずかしさに慣れない私は、再び"夏野君"と呼ぼうとして、慌てて“陽一”と言い直す。
陽一が、ドリンクを啜りながら、金髪の間から覗くように横目でこちらを見る。
「私を、名前で、呼ぶ事が」
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