彼が虚勢をはる理由
「……あ、待てよ。夏野君、遅刻はしがちだったよ」
「当時も?」
「うん。地元でお婆ちゃん助けてから来てたからね」
「はい?」
地元でお婆ちゃんを助けてた? 何だソレ?
ってか、夏野君って、そんなに優しい人なの?
全く意味が分からない。
「……どういう事?」
「今は違うんだけど、私の通った中学の最寄駅ね、エレベーターやエスカレーターが完備されてなかったの。で、夏野君を昔可愛がってくれてた近所のお婆ちゃんがいるらしいんだけど、足腰が悪くて頻繁に病院に行ってたらしいんだよね。夏野君はお婆ちゃんが通院しやすいように、最寄の駅を使う手伝いをしてたんだって」
……何て良い話なんだ。道徳の教科書にでも載りそうな感じ。
それを、あの、無愛想っぽい夏野君が。
「…何か、普通に遅刻しても、ボランティアみたいな感じで、許されちゃいそうだよね」
「でしょ? 今はどうだか知らないけど。そもそも何処に戻ってきてるんだか」
「いや、××線の沿線みたいだよ」
「あれ、前と変わんないじゃん。あたしも××線だもん」
……ねぇ、夏野君は何で毎日、そんなに遅れて来てるの?
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