彼が虚勢をはる理由
「今ね、家族と一緒に、母方の婆ちゃんも住んでるんだわ。でも婆ちゃん、足腰悪くてさ、車椅子使ってんの。だから俺、婆ちゃんが母ちゃんと病院行くの手伝ってから学校来てんだわ。エスカレーターだと車椅子の車輪も安定しねぇし」
エスカレーターだと、車椅子の車輪は安定しないのか……。知らなかった。
「でも、それは家庭の都合とかってヤツで、遅刻にはならないんじゃない?」
「あぁ、だから担任は知ってるよ。呼び出し食らった日にね、さすがに話した」
「じゃあ、今は遅刻の扱いにはなってないんだ?」
「たぶんな。此処の学校、遅刻しすぎると、退学になっちゃうんだったよな」
さすがにその事は知ってたか。
転校してきて、すぐに退学になっちゃうのは、さすがに無いよね。
「…しかし、意外だね。夏野君、そんな人だったんだ。それが知られたら、皆が友達になってくれるのに」
「いや、それはいらない」
「え? 何で? ぼっちで良いの?」
私がそう聞くと、夏野君は私は見下ろして、予想外の言葉を吐いたんだ。
「見かけだけの偽りなら、居ても邪魔なだけだから」
――――見かけだけの偽りって、一体何の事?
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