彼が虚勢をはる理由





「何? ノートでも忘れた?」

「いや、ページが切れそう」


私は鞄からルーズリーフの袋を取り出し、それをそのまま夏野君に渡す。
夏野君は嬉しそうに、こんな事を聞いてきた。


「…これ、全部貰って良いの?」

「アホか。好きなだけ取ってって良いけど、全部はあげないって」

「分かった。じゃあ、三枚貰うわ」


夏野君はルーズリーフを、きっちり三枚数えて取り出した。その手に、妙な違和感がある。
……けど、何をどう考えたら、ルーズリーフを全部貰えるって発想になるんだろう? 夏野君の天然な発想には、少しついていけない。


「はい。サンキュな」

「どうも」


夏野君からルーズリーフの袋を返してもらい、私は英語の予習に戻る。
英語が苦手な私には、残念ながら夏野君のボケに付き合ってる暇は無いんだ。

予習に集中してた私は、社会担当の学年主任が教室に入ってきた事には気付かなかった。


「夏野、夏野陽一はいるかー?」

「……何すか?」


学年主任の声にすら気付かなかった私は、近くで夏野君の声が聞こえた事で、ようやく顔を上げた。


「おぅ夏野、ちょっと来い」





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