彼が虚勢をはる理由





仕方無くという感じで、夏野君は立ち上がって学年主任の所へ向かう。
そのまま夏野君と学年主任は、教室を出て行った。

すぐに英語担当の先生が入ってきて、授業が始まる。
先生が教室を見回して、出欠席を確認し出した。


「……あれ、夏野は?」

「さっき学年主任に呼び出されて、教室出て行きましたー」


私がそう言うと、振り返ってきたハルと目が合った。
何か言いたげなのは分かるけど、何を言いたいかは分からない。

…しかし、夏野君は何で呼び出されたんだろう?
幾ら少しは喋るようになったとはいえ、それを知るには、私は夏野君のコトを知らなさすぎる。

回答を指名されないように祈りながら、何とか英語の授業をやり過ごした後、ハルが私の席の所に来た。


「香苗?」

「あ、ハル。さっき見てきたよね? あれ、どうしたの?」


するとハルは、少し言いにくそうに、「彼氏が見たらしいんだけどね」と話し出した。


「昨日の放課後、体育館の裏で、夏野君が三年生達を殴ってたらしいんだよね」

「……はぁ?」


夏野君のルーズリーフを数えてた手の違和感に、ようやく気付いた。
夏野君の利き手である右手に、痣があったんだ――。




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