彼が虚勢をはる理由
に。
――やっぱ痛いし、痛いし、痛いだけだし。
っていうか、話し合いとかの方法を選べば、別に殴る必要なんて、本当は無かったんじゃないの?
私は一睡も出来ずに、翌日を迎えた。
理由は簡単、夏野君のコトを考えていたんだ。
……というより、何で私が夏野君のコトまで考えなきゃいけないの? 夏野君が勝手に三年の先輩達を殴って、それが祟って学年主任に呼び出されただけでしょ?
取り敢えず私は英語の成績がピンチだから、夏野君の心配までしてるゆとりは無い。
寝不足の足を引き摺りながら、教室に入って自分の席に座る。
家庭の都合で毎日のように遅刻してくる夏野君は、今日も本鈴の時に学校に来てなかった。
私はその理由を知ってるし、事情を知らない他の人達も、遅刻の常習犯が今日も遅刻した所で、誰も心配する人はいない。
薄情だって思われても仕方無いけど、皆だって忙しいんだから責められない。
そんな事を考えながら、授業が始まるまで少し寝る事にする。
「……星崎、星崎? あてられてるぞ」
そんな声が聞こえて顔を上げると、日本史の先生が私を思いっきり見ていて、クラスの殆どの子も私を見ていた。
横の席を見ると、夏野君が困り眉で私を見ている。
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