彼が虚勢をはる理由
すると、夏野君は、担任を面倒そうに見上げてから、けだるそうな感じで、一言だけ言った。
「夏野陽一です」
担任も私も、クラスメートも、夏野君の次の言葉を待つが、夏野君は一向に喋らない。
普通なら、もう少し話すと思うんだけど。
「……席、何処? 終わりなんですけど」
えぇーっ!? そんなのアリ?
名前、言っただけじゃん。
担任は慌てて、教室の窓側の一番後ろの席を指さす。
「夏野の席は、あそこ。皆、夏野を宜しくお願いします」
何で担任が、”宜しくお願いします”とか言ってるの?
普通、転校してきた人が言う台詞じゃない?
しかし、当の夏野君は、担任の言葉を軽く無視して、言われた席にただ向かうだけ。
せっかくのイケメンを、けだるそうに歪めながら。
あの転校生、何なの? 態度悪すぎ。
幾ら平和なこの学校でも、さすがにイジメに遭っちゃうかもよ?
「今日の連絡事項は以上です。皆、一時間目の体育に遅れないでね」
体育は移動教室で、体操着やジャージに着替えてから、体育館に行かなきゃいけない。
ホームルームが終わった後、私は急いで準備した。
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