彼が虚勢をはる理由
よん。
英語のグラマーの授業が終わっても、その後の古典の授業が終わっても、夏野君は教室に戻ってこなかった。
私は夏野君が気がかりで授業に集中出来ず、ただでさえ苦手なグラマーで阿呆なミスを繰り返し、クラス中から馬鹿にされてしまった。
馬鹿にする笑いの中で、心配するようなハルと目が合った。
くだらないミスを古典でも繰り返していると、今度は舞子と目が合って、何となく言い逃れ出来ないような気分になった。
「…香苗、どうしちゃったの? 確かに香苗は英語は苦手だけどさ」
「古典はそんなに苦手じゃないよね?」
午後の授業が終わった後、教室の掃除をしてる時に、ハルと舞子が声をかけてきた。
明らかに心配してくれている。それが、手に取るように分かる。
…だけど、出来るなら突っ込まれたくない。
たぶん、この二人は、夏野君の行動の理由が分かってない。私だって、全部を分かってるとは言えないけど。
「……そんなに、夏野君が心配? 言い方が悪いとは、夏野君は香苗には向いてないと思うよ」
ハルが言い方が悪いとは言いつつ、グサッと言ってきた言葉は、凄く的を得ていた。
暴力反対で平和主義な私には、人を殴ったりしてトラブルを起こす夏野君は、確かに向いてない。
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