彼が虚勢をはる理由
ご。
「……崎、星崎、起きろよ」
誰かの、低い声が聞こえる。
何だか懐かしいかもしれない、ちょっと聞きたかった声。
「参ったなぁ…。風邪ひくだろ、星崎」
困った感じでボヤく言葉で、私はそれが、戻ってくるのを待っていた、夏野君の声だと分かった。
私は突っ伏してた顔を机から上げて、口からヨダレが垂れてないかだけ確認する。
視界に入った時計を確認すると、掃除が終わってから、一時間半が経っていた。
「夏野君…?」
「あ、星崎、起きたんだ。何で残ってんの? 授業、とうの昔に終わっちゃってるじゃん」
…それ、聞きますか? どうせ見当がついてるんでしょ。
私が、夏野君が教室に戻るのを待っていたって。
言わなきゃ駄目ですか? 照れくさい。
「……言わない」
「あっそ。まぁ良いけど」
良いのかい! 私は思いっきり突っ込みたくなったけど、取り敢えず声には出さないでおく。
何だよ。恥ずかしい事言わせる、羞恥系プレイだと思ったわ。
「…それより、何で夏野君は呼び出されたの? しかも、こんなに遅いし」
「え? そりゃ、他校の生徒を殴ったってトラブルになったからだろ?」
「それ、本当なの?」
「本当だよ。嘘なんかで呼び出されてたまるかよ」
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