彼が虚勢をはる理由
夏野君が心底嫌そうな顔で、思いっきり毒づく。
…おっしゃる通りです。私だって、それは嫌。
「何で、そんな事をしたの?」
「そんな事って?」
「だから、何で他校の人を殴ったりしたの?」
そこまで聞くと、夏野君はまた、嫌そうな顔をした。
「ヤダね。言いたくない」
「何で? 私は事実が知りたいだけなんだけど」
「…どうせ星崎だって、俺が全部を正直に話したって、ロクに話聞いてくれずに、悪いんだって怒るんだろ? そんなヤツばっかじゃん」
……あぁ。きっと、夏野君はそんな経験を、沢山してきちゃっただね。
私は、自分が信用してもらえなかった事も、夏野君の悲しい過去にも、まとめて悲しくなってきた。
「……そんな事無いよ。そんな、頭ごなしに否定したりしない。私は、夏野君が人を殴ったなら、それにはきっと理由があるって、信じてる」
「…星崎、泣いてるの?」
どうやら感情が高ぶって、涙が出てきちゃったらしい。
私は自分の指で、そっと涙を拭った。
「……星崎に泣かれちゃ、敵わねぇな。あのさ、俺が他校の人間を殴ったのは、六組の友人が、殴った連中に強請られてたからだよ」
「そうなの?」
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