彼が虚勢をはる理由
夏野君は転校してくるまでは関西にいたみたいだけど、中学卒業まではこっちにいたらしい。
隣りのクラスの風見優美もそう言ってたし、このクラスの友達はまだ少ないみたいだけど、きっと古い友達だって多い筈。
当然、六組に古い友達がいる事にも、何も驚かない。
「六組の強請られてたヤツは、同じ中学の同じ部活だったんだよ。当然、困ってるのに、無視するわけにはいかねぇよな」
「分かる。私が同じ立場でも、何とかしようって思うもん」
「だろ?」
私が相槌を打つと、夏野君は頷いて、こっちを見た。
夏野君の金髪が夕日に透けて輝き、右耳に並ぶピアスがチャラチャラと音を立てる。
思わずその格好良さに、私は見惚れそうになる。
しかし私には、もう一つの疑問が浮かんだ。
残念ながら、夏野君の格好良さに見惚れてるゆとりは無い。
「じゃあ、アレは? こないだ放課後に、三年の先輩達を殴ってたっての」
「あぁ、アレか。――隣りのクラスの風見って分かる? 風見優美」
「知ってる。一年の時、同じクラスだったよ」
「あ、そうなの? で、風見が殴られてたんだよ」
「はいぃ!?」
は? 何ソレ? 優美にそんな事があったっていうの?
私、それ知らないよ。何で?
ってか、優美は大丈夫なの?
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