彼が虚勢をはる理由
「昨日の放課後は残ってて、夏野君待ってたじゃん? アレ、どうなったの?」
……うわ、やっぱり。
これは私が大の苦手な、恋バナっぽいヤツになる流れじゃないですか。
「…それ、言わなきゃ駄目?」
「駄目ですね。香苗には言う義務があると思うよ」
「昨日、一緒に帰るの拒否ってきたしねぇ」
……うぅ、言い訳が出来ない。
ハルと舞子が言ってる事は、確かに事実で。
「でも、昨日はあの後、何も無かったよ」
「は? んなわけ無いじゃん」
「香苗、夏野君を待てずに帰っちゃったの?」
「いや、違うけど」
正直に話すと、ハルと舞子は信じられないというような顔をした。
だって、昨日は本当に、夏野君の話を聞いただけだし。
…でもコレは、正確に全部を話さないと、二人は納得してくれなさそうだなぁ。
「本当に何も無かったの?」
「無かったよ! 戻ってきた夏野君と話しただけ」
「本当にー?」
「本当だってば! 夏野君を待ちきれずにちょっと寝ちゃって、戻ってきた夏野君に起こされて、夏野君が他校の生徒を本当に殴ったかどうかと、夏野君が暴力を奮う理由を聞いただけ!」
私がもはやヤケッパチで訴えると、声が大きかったのかクラスメート達に振り向かれた。
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