彼が虚勢をはる理由





「おはよーさん」


まさか空席の隣りから声が聞こえてくるとは思ってなかったから、私は真っ赤な顔のまま、今度こそ本当に飛び上がった。
いつの間にか夏野君が来ていて、ニヤニヤと私を覗き込んでいた。


「…お、オハヨー」

「何それ、片言じゃん。日本語が苦手な外国人かよ」


……う、普段はボケてる夏野君の突っ込まれたし。
それもこれも、全部が夏野君の所為じゃん! あんな事を言ってたから、色々考えちゃったじゃん。
私は凄く勝手に、全てを夏野君に責任転嫁する事にした。


「…ってか、どこから聞いてたの?」

「どこからって、何が?」


ニヤニヤと笑いながら、返事を寄越してくる夏野君。
…この人、絶対に私の質問の意味を分かってる。
そして分かったうえで、私をからかって遊んでる。確実に面白がってるもん。


「……だから! 私とハルと舞子の会話!! 聞いてたでしょ!」

「あぁ、アレか。聞いてたよ」


私が覚悟を決めて言うと、夏野君はニヤニヤしながら、けどあっさりと返してきた。
あぁもう、照れくさくて仕方無い。私、今絶対に真っ赤になってる。


「あー、"甘い展開は無かったの"的なトコらへん?」

「なっ……」


うわー嫌だ! 恥ずかしすぎる!!





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