彼が虚勢をはる理由





それから夏野君は半笑いみたいな、苦笑した感じで私を見た。


「まぁ、せいぜい頑張れよ」

「言われなくても分かってるよ」


私は心底むくれて、思いっ切りソッポを向いた。
我ながら幼稚だとも思ったけど、そうでもしないとやってられなかった。


「夏野~?」


いつの間にかに、成績表を渡されるホームルームは終わっていた。
夏野君は声をかけられるけど、いつものように一度目は無視する。


「夏野ってば、聞いてる~?」

「何?」


声をかけてきた男子に、夏野君はようやく返事をした。

夏野君は最近ようやく、少しずつだけどクラスの人達と仲良くなってきた。
夏野君が遅刻したり、やたらと喧嘩している事が、実は誰かの為の行動だと知られるようになり、クラスメイト達が恐る恐る声をかけるようになってきたんだ。
それには今みたいに、一度目の声かけは無視しても、二回以上声をかけられるとちゃんと反応している。


「……って事で、悪いんだけど、夏野も一緒に来てくんない?」

「しゃーないね、分かった」


―――正直に言うと、私は少し微妙な気分だ。
夏野君がクラスメイトと仲良くして、友達ができる事は、凄く良い事だと思う。





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