彼が虚勢をはる理由
に。
「こんにちわ~、香苗です」
扉を開けて玄関に立ち、家の奥に呼びかける。
すると中から、御祖父ちゃんと御祖母ちゃんが出てきた。
「よく来たね、香苗」
「元気だったかい?」
「うん、元気だったよ。久しぶりだね、正月以来?」
「おぉ、そうだったな。さぁ、お上がり。暑かっただろう?」
「喉が渇いてるんじゃない? 麦茶が冷えてるよ」
「ありがとう。じゃあ、頂こうかな」
私は靴を脱いで上がり、リビングに移動した。
床に大きな荷物を幾つも置き、取り敢えず椅子に座る。
御祖母ちゃんが冷蔵庫から麦茶を出して、コップになみなみと注いでくれた。
今日も外は暑いし、重たい荷物を運んできて疲れたから、冷たい麦茶は本当に有り難い。
「ありがとう。頂きます」
「どうぞ、召し上がれ」
今日は七月二十二日、夏休みに入ってから最初の週末。
私は今日から、八月のお盆明けまで、この父方の実家で農業を手伝いながら過ごす。
一昨年までは、特に手伝ったりとかはしてなかったんだけど、御祖父ちゃんが歳を取るにつれて農業を続ける事が厳しくなった事と、私が高校に進学して部活やサークルに所属しなかった事から、こうして夏休みは顔を出して手伝うようになったんだ。
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