彼が虚勢をはる理由





――――と言っても、私は農業の事を何も知らないし、出来る事も限られているから、私がやる事なんて収穫物を運ぶ事と、水やりくらいだけど。


「そうだ! お土産持ってきたよ!」

「本当かい? ありがとう、香苗」


私は高校の近くの和菓子屋さんの、名物の饅頭と葛餅を取り出して、テーブルの上に置く。
饅頭は御祖父ちゃんと御祖母ちゃんの大好物だし、葛餅は雑誌に載っちゃうくらい有名なんだ。


「葛餅も買ってきてくれたんだねぇ。紅実も喜ぶよ」

「今年は紅実ちゃんも来るの?」

「来るって。明日には来れるらしいよ」

「やったー、嬉しい!」


紅実ちゃんは星崎紅実(ホシザキ クミ)と言って、私の父方の従姉妹なんだ。
歳は二つ上で、今は大学で日本文化について学んでる筈。
一人っ子の私にとっては紅実ちゃんは本当のお姉さんのようで、優しいし頼りになる存在なの。
因みに、そんな紅実ちゃんは、葛餅が大好物なんだよね。


「紅実と香苗は、昔から本当に仲が良かったもんね」

「小さい頃から、ずっと遊んでもらってきたからね~。あ、麦茶ありがとね」

「いえいえ。好きなだけ飲みなさいね」

「うん、分かった」




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