彼が虚勢をはる理由
麦茶を飲み終わって一息ついた私は、長く泊まり込む時にいつも使ってる部屋に、荷物を運び込む事にした。
和室の畳の上にドサッと置かれる、赤いトランクと黒いボストンバック。
その中には、五着分くらいの下着と着替え、夏休みの宿題を全部と筆記用具と英語の復習用の問題集、歯ブラシや化粧水やら日焼け止めやら、それとスマホとバッテリーとコンセント等が入っていた。
下着や服は洗濯しながら繰り返し着る。幾ら夏服とはいえ、滞在期間である約二十日分の服なんて、かさばるから持って動きたくない。
父方の実家に遊びに来てるだけとはいえ、もはや長期のような旅行のような荷物だと、自分でもつくづく思う。
御祖父ちゃんの手伝いもしてるし、宿題や復習もあるから、遊びとは言い切れないんだけど。
取り敢えず荷物を整理しようと思ってトランクを開けると、宿題と筆記用具と問題集が目に入った。
あまりにも悪すぎる英語の成績が、脳内に甦る。
……嫌な思い出だ。休み明けには挽回しなきゃ。
あのままの成績が続けば、今年こそ学年末に追試の憂き目に遭ってしまうから。下手すると落第や退学の恐れだってある、怖いったらない。
その為に、わざわざ昨日は本屋に行って、復習用の問題集まで買ってきたんだから。
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