彼が虚勢をはる理由
さん。
「紅実ちゃん、コレ分かんないよ~」
「どれどれ? ちょっと見せてみ」
八月に入ったある日。
私は紅実ちゃんと一緒に御祖父ちゃんの農業を手伝った後、宿題をやっていた。
私の家のエリアに比べるとコンクリートの建物が少ないこのエリアは、照り返しは少なく自然は多く、全体的に風通しが良くて過ごしやすい。
しかし、それでも私の英語ははかどる事は無く、こうして紅実ちゃんに教えてもらってる状態だ。
「あ~、コレね。コレは仮定法だから、be動詞を過去形にしなきゃ駄目だよ。で、これがこうなって……」
宿題の問題集と、私の英語のノートを見比べながら、赤ペンでサラサラと書き込んでいく紅実ちゃん。それを、尊敬の眼差しで見つめる私。
紅実ちゃんは私と違って英語に強くて、教え方も分かりやすいから、こういう時は本当に助かる。
「……で、此処までは分かった?」
「うん。ありがとうね、紅実ちゃん」
「いえいえ~。…さて、私は休憩にするけど、香苗はどうする? 頭が煮詰まる前に、一息入れた方が良いんじゃない?」
「もう煮詰まっちゃったよ~」
「あはは。相変わらず、香苗は英語が苦手だなぁ」
紅実ちゃんと私はそんなやりとりをしながら、リビングに向かった。
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