彼が虚勢をはる理由

に。






「はあっ…、はあっ…」


私は机の上に鞄をボスンと置き、ドカッと椅子に座る。
そのタイミングで、本鈴のチャイムが鳴った。


「間に合ったーー!!」

「お疲れ、香苗」


ハルが頭を撫でてくれた。
担任が教室に入ってくる。


今日は、私が通学に使ってる電車が、まさかの一時間の遅延をしていて。
おまけに、振替輸送をしてるバスも、混雑で遅れてた。

一応、駅で遅延証明書は貰ってきたけど、それでも遅刻しない方が良いに決まってる。
そう思った私は、学校の最寄りのバスの停留所から、全力疾走してきたんだよね。


「居ないのは、えっと……夏野、と」


担任が出席を確認する声で、私はクラス内を見回した。
確かに夏野君だけが居ない。
……また、今日もか。


夏野君は、毎日のように遅刻してきている。
というか、転校してきた初日以外は、毎日遅刻している。
しかも奇妙なのが、毎日遅刻してくる時間はだいたい同じで、ちょうど十分くらいなんだよね。

電車が混雑してたらすぐに遅延するとか、長い路線なら遅延しやすいとかはあると思うけど。
どうやら、そういう理由でもないらしい。

このままじゃ、遅刻しすぎで、学年主任から呼び出されちゃうよ…?





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