彼が虚勢をはる理由
「紅実ちゃん、ソレ本気で聞いてるの? 私が恋バナとか苦手なの、知ってるでしょ?」
私はそんな恨みも込めて、ジロリと紅実ちゃんを睨む。
しかも、私はこういう話を、特に家族や親戚に聞かれたく無いタイプだ。ここは御祖父ちゃん達の家の、しかもリビングなんだから、いつ聞かれたっておかしくない。
「いや、香苗も恋バナとかが苦手なのを克服して、少し大人になったかな~って」
「克服出来てない。むしろ、そんな大人になりたくもないね」
「まぁまぁ、そんな冗談言わないの」
クスクスと笑う紅実ちゃん。
私は凄く真面目に言ってるつもりだし、それが大人ならなりたくもないんだけど。
「で、結局はどうなの? 彼氏はできた?」
めげずに、しつこく聞いてくる紅実ちゃん。
そんなに他人の彼氏事情が気になるのか。犬も食わないらしいのに。
「彼氏ならできてないよ。相変わらず、男子のボケに突っ込む毎日を送ってる」
「素の性格から突っ込みタイプな香苗らしいね。でもソレも、どうせ照れ隠しなんでしょう?」
「うるさいなぁ」
ニコニコとしながら聞いてくる紅実ちゃんに、私はさすがに少しイラッとした。
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