彼が虚勢をはる理由





「紅実ちゃん、ソレ本気で聞いてるの? 私が恋バナとか苦手なの、知ってるでしょ?」


私はそんな恨みも込めて、ジロリと紅実ちゃんを睨む。
しかも、私はこういう話を、特に家族や親戚に聞かれたく無いタイプだ。ここは御祖父ちゃん達の家の、しかもリビングなんだから、いつ聞かれたっておかしくない。


「いや、香苗も恋バナとかが苦手なのを克服して、少し大人になったかな~って」

「克服出来てない。むしろ、そんな大人になりたくもないね」

「まぁまぁ、そんな冗談言わないの」


クスクスと笑う紅実ちゃん。
私は凄く真面目に言ってるつもりだし、それが大人ならなりたくもないんだけど。


「で、結局はどうなの? 彼氏はできた?」


めげずに、しつこく聞いてくる紅実ちゃん。
そんなに他人の彼氏事情が気になるのか。犬も食わないらしいのに。


「彼氏ならできてないよ。相変わらず、男子のボケに突っ込む毎日を送ってる」

「素の性格から突っ込みタイプな香苗らしいね。でもソレも、どうせ照れ隠しなんでしょう?」

「うるさいなぁ」


ニコニコとしながら聞いてくる紅実ちゃんに、私はさすがに少しイラッとした。





.
< 60 / 145 >

この作品をシェア

pagetop