彼が虚勢をはる理由





私はまだ慣れない下駄と浴衣で、紅実ちゃんを小走りで追いかける。
私はここまで来て初めて、紅実ちゃんが夏祭りに誘ってくれた理由が分かった。
紅実ちゃんは紅実ちゃんなりに、私の恋愛を応援しようとしてくれていたんだ。

本殿に到着して、紅実ちゃんと一緒に賽銭箱の前に立つ。
御賽銭を出そうと財布を取り出した。


「御賽銭は五円玉が良いよ。"御縁がありますように"って。投げちゃ駄目ね、入れるの」


紅実ちゃんのアドバイスを聞いて、財布の中で五円玉を探す。運良く、一枚だけ五円玉が入っていた。
二人で御賽銭をそっと入れて、鰐口をガラガラと鳴らし、二礼二拍手し、心の中で日頃の感謝と願い事を呟く。
本殿に来る途中で紅実ちゃんが、"神様に自分の居場所を知らせると良い"って言ってたから、自分の住所と名前を思い浮かべる事を忘れなかった。
最後に"宜しくお願いします"の意味も込めて、大きく一礼した。


「さてと、せっかくだし、御守り売り場にも寄ってこうか?」


紅実ちゃんがそう言ってくれたので、私達は御守り売り場にも行く事にした。
御守り売り場では、やはり"恋愛に御利益がある神社"として知られている事もあってか、恋愛運の御守りが目立った。





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