彼が虚勢をはる理由
03. 偽りで幸せならどうぞ?
いち。
私は英語の復習と農作業に精を出し、ハルは彼氏との楽しい日々を満喫し、舞子は秋の大会の為に毎日テニスに明け暮れた夏休みが終わり、新学期が始まった。
こうして学校に来て、自分の席に座ると、何だか戻ってきた気がして、少ししみじみする。
……ただ、夏休み前と違うのは、私は多少は苦手な英語を克服し、私の茶髪には紅実ちゃんから貰った蝶の飾りの簪が付けられていた。
しかし、本鈴のチャイムが鳴っても、私の隣りの席を使う夏野陽一君は、毎度の事ながら来ていなかった。
――家庭の都合とは分かってはいるものの、始業式から遅刻するのは問題な気もするし、何だか心配な気もしてくる。
始業式から戻ってくると、隣りの席の机には鞄が置いてあったので、たぶん始業式の途中に来たのかな?
まだ教室には戻ってきてないけど。
「…良かった、ちゃんと来たんだ」
「何が良かったの?」
声が降ってきた方を見ると、明るく透ける金髪と、右耳にピアスが並ぶ男が、ニヤニヤ笑いながらこっちを見ていた。
実際に会えた事の安心感と同時に、独り言を聞かれていたという事による恥ずかしさを覚える。
「…お、おはよ」
「おはよーさん」
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