彼が虚勢をはる理由





「何かあったのか?」


授業が終わって、私が伸びをしていると、斜め前の席の夏野君が、後ろに振り返ってそう声をかけてきた。
こないだのHRで席替えがあったんだけど、私と夏野君の席は、またまた近くになってしまった。あの時はハルと舞子に散々からかわれたっけ。


「何かって、何が?」


夏野君が急に声をかけてきた理由が分からないから、私はそう聞き返す。


「女子テニス部。さっき太田達と、何か話してただろ」

「あぁ、あれか…。女子テニス部で、ラケットが失くなる事件が続いてるんだって。何でも秋の大会の選抜に入った一・二年生だけのラケットが失くなっているようで、ついに補欠だった舞子のラケットも消えたみたい」


私は舞子から聞いた話を、簡単に夏野君に説明する。
夏野君は真剣に話を聞いてくれた。


「ラケットが失くなったって……、片付ける場所を間違えたとかじゃなくてか?」

「違うみたい。それどころか、鍵付きのロッカーに片付けたんだって。にも関わらず、校庭の整備の後に持って帰ろうとしたら、一緒に片付けた他の子のラケットも一緒に失くなっていたんだって」

「へぇー。…ソレ、嫌がらせかもしんないなぁ」

「嫌がらせ? 誰の?」





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