彼が虚勢をはる理由

さん。






私とハルが舞子から、「テニスラケットが失くなった」という話を聞いてから、三日後。
それはつまり、夏野君の悪口を言う人達に、私が喧嘩を売ってから三日後。
英語のライティングの予習の為に深夜遅くまで勉強してて寝不足だったその日、テニス部の部長や顧問達がラケットの行方を必死に探してた昼休みに、ラケット盗難の犯人が捕まったというニュースが、クラスに飛び込んできた。

昼休みが終わる三分前、次の授業のライティングに冷や汗を流す私が準備をしていると、舞子が走ってる勢いで教室に飛び込んできた。
勢い良く教室の戸をバンと開け、勢い収まりきらずに教卓にぶつかる舞子。
普段は頭も良くて、比較的冷静な舞子が、こんなコメディチックな行動をとっている事は珍しい。何かあったのかな?


「ラケット、見つかった!!」


誰にともなく叫んだ舞子に、女子テニス部のラケット盗難は噂になってたのか、クラス中がざわつく。
私は眠い目をこすりつつ舞子に詳細を聞こうと立ち上がったけど、ちょうどそのタイミングでライティングの先生が来てしまった為、我慢して席に座った。
私はその時、一つだけ小さな違和感を感じたけど、その違和感が何かまでは分かんなかった。





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