彼が虚勢をはる理由
確かに私は眠い。コーヒーが飲みたい。
英語の授業で寝る事も考えたけど、そんな事をしたら、英語が苦手な私は、後で絶対に困ってしまう。
するとハルは、私の後ろ髪を少し摘まんで、軽く引っ張った。
「香苗、寝不足なんじゃないの? 寝癖ついてるよ」
「あ」
……そういや今朝、寝不足から少し寝坊して、髪形をチェックしてる時間が無かったんだった!
後ろ髪なんて、簡単には鏡でも確認出来ないし、尚更チェックから漏れそう。
今から考えれば、電車やバスは遅延してたから、遅延証明書さえ手に入れば、急ぐ必要が無かったと気付く。
けど、私が苦手な一時間目の英語が、残念ながらそれを許してくれないけど。
机の上の単行本を見てると、一冊足りない事に気付いた。
確か、番外編が収録された六巻目も合わせて、ハルに貸した筈なんだけど。
「…ハル、六巻は? 番外編が入ってるやつ。一緒に貸したよね?」
「ごめん。六巻はまだ読んでないんだ。今度返すよ」
それを聞いた私は、思わず苦笑してしまった。
ハルは、最初にした"二週間貸す"という約束を守ったに過ぎないんだけど。
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