彼が虚勢をはる理由
「で、どういう事だったの?」
ライティングの授業が終わった後、私とハルは事情を聞こうと、舞子に質問した。
……しかし、あぁ、眠い…。欠伸を何とか噛み殺す。
クラスメート達も直接は動いてないけど、やっぱり経緯を気にしてるのか、何となく静かにして私達の会話を聞こうとしているのが分かった。
舞子は一度深呼吸してから、それでも興奮気味に話し始める。
「私も部長から聞いただけだから、全部を知ってるわけじゃないんだけどね」
「分かってる」
私の相槌に、ハルも頷く。
「ラケットの紛失が続いてたの、やっぱり盗まれてたんだって。で、そのラケットを盗んでたのって、三年の先輩だったんだって……」
「はい? 外部から盗まれてたとかじゃないの?」
てっきり外部の変質者が、女子高生の使ったラケットを盗んでいたんだと思い込んでいた私は、思わず聞き返す。
舞子は静かに、首を横に振った。
「違うの。……ラケットを盗んでた先輩ね、最近怪我して調子悪くて、今度の秋の大会の選手になれなかったの。で、代わりに私とか、他の二年生が選ばれたじゃん? 腹いせにというか、選手になった子のラケットが無ければ、代わりに自分が選手になれるかもって思ったみたいなの……」
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