彼が虚勢をはる理由

よん。






「星崎、起きろ~。さすがに風邪ひくぞ」


何処からか声が聞こえる。耳馴染みの良いその声に呼ばれるように、私は目が覚めた。


「あ、起きた」


斜めの前の席に座る夏野君が、こっちを向いて笑っている。
教室内に長く入り込む夕日が夏野君の金髪に当たって、キラキラと綺麗だった。
それはまるで、幻想的なまでに綺麗だった。


「おはよー、星崎。今が何時だか知ってる?」

「う~んと……。うええぇぇぇ!?!?」


夏野君の言葉に腕時計を見て、私は一気に現実に引き戻された。
私の腕時計は五時半を示していて、何かの間違いかと思って教室の壁掛け時計を確認したけど、それでもやっぱり時刻は五時半だった。
五時半って言ったら、六時間目の古典はとうの昔に終わっていて、帰りのHRも教室掃除も終わって、そこから二時間近くも経ってるじゃん!!
我ながら随分と眠ってたなぁ…。ってか、誰も起こしてくれなかったっていうの!?


「よく寝てたな、オマエ。いつから寝てんの?」

「古典の授業の前から…」


私が溜め息混じりに答えると、夏野君は吹き出す。


「古典!? 六時間目だろ? まさか、全く目覚めなかったとは言わないよな…」





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