彼が虚勢をはる理由
「ホント、人って裏で何考えてんだか、マジ分かんねぇよな」
夏野君が聞こえるか聞こえないかくらいの声で、ボソッと呟く。
ヤバい。何となくそう感じた私は、理由も分からずソワソワと焦り始めた。
「…しかし、やっぱ説教食らうとマジ疲れるわ。という事で星崎、俺は帰るから。んじゃ」
「待って! まだ聞きたい事がある」
理由も分かんなかった嫌な予感は的中して、私は鞄を担ぐ夏野君に咄嗟に声をかけた。
夏野君が面倒くさそうな感じで、こっちを振り向く。
「……何?」
本当に咄嗟に、夏野君に帰って欲しくなくて出た言葉だったから、私は慌てて夏野君に聞きたい疑問を探し始める。
私の慌てっぷりは表情にも出ていたらしく、夏野君はさらに眉に皺を寄せた。
そのうち、私は夏野君の行動で、前から少し気になってた疑問を思い出した。
「前から気になってたの。“裏では何考えてるか分かんない”って何?」
夏野君が大きな溜め息を吐いたから、私は慌ててつけ加えた。
「夏野君が嫌なら、話さなくても良いよ。私もこれ以上は聞かないし」
「いや、そういうんじゃねぇけど…」
夏野君はまた溜め息を吐いてから、担いでた鞄を机に下ろした。
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