彼が虚勢をはる理由
に。
「どう? あれから、何か進展あった?」
「何も。そもそも、喋れてすらないもん」
放課後、街の激安クレープ屋にて。
珍しく女子テニス部の練習が休みの舞子と、これも珍しく彼氏と一緒に帰らないハルと一緒に、甘いクレープを片手にだべってた。
そして何が一番珍しいかというと、恋バナが一番苦手な筈の私が、今回は中心になって恋バナしてるという事だと思う。
「え? だって告ったんだよね? 返事はまだ?」
秋の大会で良い成績を収めた舞子が、苺と生クリームのクレープに齧りつきながら聞いてくる。
それに対して、チョコバナナのクレープの最後の一口を飲み込んだ私が答えた。
「まだ貰ってない。もう一週間も経つんだけどな」
「“好き”って言った? 言わないと、意外と分かってくんないよ」
「言ったよ! “好きだから、壁ドンとかされるとドキドキする”って、ちゃんと言った!」
それを聞いた舞子が、うーんと唸る。
自分で言ったくせに、何だか急に恥ずかしくなってきて、私は縋るようにハルを見る。
「ハル大先生、こういう時はどうすれば良いですかね?」
恋愛に関しては、私よりも絶対にハルの方が詳しいに違いない。
そう感じた私は、ハルにアドバイスを求める事にした。
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