彼が虚勢をはる理由
しかし私はすぐに、ハルに答えを求めた事を、少しだけだけど後悔する事になる。
ハルはニヤニヤした顔で、こっちを見てきたからだ。
「"好き"って言ったんだよね?」
「言いました!」
勢い良く答える私。
ハルのニヤニヤに拍車がかかる。
「その時の夏野君の反応は、どうだった?」
「あ…」
聞かれて、ようやく覚えてない事に気付いた。
…と言うより、むしろ。
「反応を見る前に、教室を飛び出しちゃったんだった…」
「あらま」
あの時の事を思い出してると、一緒に壁ドンされた時の夏野君の表情も思い出す。
目にかかる金髪の間から覗く、見抜くような目。
"好き"という感情で拍車がかかる所為か、私にはたぶん、他の人よりも夏野君が格好良く見えている。
「…香苗、顔が真っ赤だよ」
真顔に戻ったハルに指摘されて、ようやく私は、顔がとても暑い事に気付いた。
テーブルに置いてあったコップに手を伸ばし、中の水を一気飲みする。
「香苗、それ私の」
舞子に突っ込まれて、私は自分のコップの中の水が元から空だった事と、舞子の前に置いてあった筈のコップが無い事に気付く。
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