彼が虚勢をはる理由
さん。
ピピッピピッと、測温終了の音がする。
私は脇に挟んでた電子体温計を取り出し、結果が表示される液晶画面を確認した。
「……三十八度三分」
「完全に風邪ひいたわね。今日は学校休んで、一日大人しくしてなさい」
私から受け取った体温計を片付け、母さんが部屋を出て行った。
一人残された私はベッドに戻り、頭から布団を被る。
ハルと舞子と一緒にクレープを食べた翌日。
水を零して制服を濡らした私は、舞子の心配したとおり、風邪をひいてしまった。
…しかも昨日の夜は、“今年一番の冷え込み”とか言って、凄く寒かったんだよね…。
学校への欠席の連絡は、母さんがしてくれるらしい。
取り敢えず私は、ハルと舞子に「今日休む」って連絡しなきゃな…。後でノートも貸して欲しいし。
そう思ってケータイを取ると、ピンク色の恋愛運の御守りが、光の反射で光って見えた。
恋愛運か…。夏野君は今日、ちゃんと学校に来てるんだろうな…。いつものように、遅刻してくるんだろうけど。
……そう考えると、夏野君に会う事が出来ない一日が、とても寂しくて長くなりそうな気がした。
だいたい最近、殆ど喋れてないし。何でも良いから、また喋りたいな。
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