ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ
海君は、力強い目で言った。
「俺は、伊織のことで泣かない。
アイツが生きてる間、俺は自分に出来る ことを全部やったつもりだ。それは俺の ワガママだったけど。
伊織に死んでほしかったわけじゃない。 できれば今も生きててほしかった。だけ ど、やっぱりそれは残された側のワガマ マでしかない。それなら俺はアイツの死 を認めて、安らかに眠れるように祈る。 それが、唯一伊織にしてあげられること だから。
――こう思えるまでに半年以上かかった けどな。伊織は生前、100年分は苦し んだんだ、もう、楽になってほしい」
海君……。
「そして、ありきたりで使い古された言 葉かもしれないけど……。俺は、伊織の 分まで生きていくって決めてる。注意し てても防ぎようのない事故や災害は無力 な俺にはどうしようもできないけど、そ れ以外の理由で人生を諦めたり、死んだ りすることはしない。つらくても、歯を 食いしばって生きていく。
幸せになって、笑って泣いて、大切な人 を笑顔にして……」
海君は、泣いていた。