ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ

「もう、帰っていいよ。私も明日、朝か らゼミがあるし……」

私に寂しい思いをさせないために。そう 言ってほぼ毎日アパートに顔を出してく れる海君。

私はもっともらしい理由をつけて海君を 帰そうとした。そうしないと、海君は疲 れを我慢してまでそばにいてくれそう だったから。

「大丈夫。それに、今日はヨウに話した いことがあるんだ」

そう言う海君の目は、まっすぐだった。 空部を作ろうと言い出したあの時のよう に。

「話したいこと?」

「うん。……今の仕事やってるの、金貯 めるためって言ったけど、理由言ってな かったよな」

「そうだね」

「ヨウ、家族と一緒に住んでた頃、眠れ ないって言ってたよな。それが理由」

「うん。よくハルシオン飲んでた。一人 暮らし始めてからは、海君がアロマ加湿 器とか持ってきてくれたおかげで寝付き が良くなったから、ハルシオン飲むこと もなくなったけど……」

それが理由って、どういうことだろう?
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