ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ
「今は雑貨屋の社員としてアロマオイル や雑貨を売ったりしてるけど、これも自 分の将来のためと思ってやってる。
好きな人を幸せにするための修業、だ な」
「海君」
「これからもっと、そばにいられる?ヨ ウと」
海君の瞳が、潤んで見える。そこに込め られた想いを、私は感じ取っていた。
初めての感覚。身体中が小さく震えて、 なのにとてもあたたかい。
「愛されるって、こんな感じなんだね」
ドキドキはしないし、トキメキもない。 でも、ぬくもりがある。
すりきれていた体が、カサカサだった心 が、たくさんの水で潤むのがわかる。
「海君……」
私は初めて、自分から海君を抱きしめ た。
「もちろん、これからもずっと一緒だ よ」
「ありがとう。一生大事にするから」
昔よりずっと大人になった海君の腕に、 抱き返される。
伝えきれない感謝。数えきれない傷跡。
海君の腕の中で、もっと幸せな日常を見 たい。