ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ
追いかける気力もなかった私は、彼の連 絡先をケータイから削除し、涙をこぼ す。
「こんなつもりじゃなかったのになー ……」
もう、私は誰ともつながれないのかもし れない。
一生、ひとりぼっちなのかもしれない。
底無しの孤独感にさいなまれていた時に バイト先で知り合ったのが、ミチだっ た。
「本当に孤独なヤツなんていない」
付き合うことになった日、ミチは優しく そう言い、私を抱きしめてくれた。
そんな、熱く穏やかな気持ちで始まった 恋も、いま、ろうそくの火のように不安 定に揺れ、あっけなく消えようとしてい る。
人並みの夢すら叶えられない私。
結局、ひとりでいるのがお似合いなん だ。
こんな私に、いろんなバリエーションの 恋愛小説を書けと言われたって、無理な 話。
どこかで聞いたような、昔のメロドラマ の脚本として使いふるされた恋愛小説し か書けない。
現実は、厳しいなと思う。
《Ⅰ 現実は……終》