ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ
ファン1号に挑発されて、私は妙な意地 を張ってしまった。腕試しといった感じ で、どうでもいいテキトーな小説を書 き、アップしたのである。
この間海君に会って浮かんだネタを元に 書いた、略奪愛を描いた物語。
元カレに彼女がいると知った女主人公 が、元カレを取り戻すべく色々仕組む、 という、恋愛小説によくある筋書き。今 までの私の創作姿勢と何ら変わらない、 ありきたりな恋愛小説。
でも、今までと違う部分がある。この小 説には、少しだけ私の願望も入ってい た。海君に、今の彼女より私を選んでほ しいとか、そういう、グログロして口に は出せないような願い。
そしたら、思った以上に主人公に感情移 入してしまって、涙が溢れた。書きなが ら泣いたのなんて、初めてのこと――。
たった60ページの短い小説。完結させ た翌日、再び、『ファン1号』から私書 箱メールが届いた。
《新作面白かったです!これからもヨウ さんの作品楽しみにしています。》
このメッセージを見て、ファン1号が誰 なのかを、初めて深く考えるようになっ た。
顔も知らない私なんかのために、どうし てここまでしてくれるんだろう?