ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ

妊婦相手に言うことじゃない。分かって るけど、私は、お母さんを祝福する気分 になんてなれなかった。

「お母さんも、馬鹿なの?どうせまた離 婚することになるって。その子もいずれ 可哀想な目にあうよ。

子供産むこと、育てること、一体何だと 思ってんの?恋の延長線上の話って?私 みたいな大人を一人増やすことになる よ!?それでもいいって?

そーか、そうなったらまた、他の男見つ ければいっか!!

お母さんには子育てなんて無理だよ!ア ホな父親と身勝手な母親に囲まれたまま 産まれてくる子が、ほんっと可哀想!」

「……!!」

バチン!すごい音がした。頬を強く叩か れた。

お母さん、泣いてる。

「分かってるわよ、私が母親失格なこと くらい。再婚してここに来たって、アン タをかまうことが出来なかった。

こんな風になりたくて生きてきたわけ じゃない。でも、これが私なのよ!

アンタが何て言おうと、私と縁を切ろう と、私はこの子を産んで育ててみせ る!」

「……勝手にすれば」

あほくさ……。労力と時間の無駄だった ね。

熱を込めて何を言われても、私への愛な んて感じなかった。お母さんの本音を前 に、気持ちはますます冷める。

他人が見たら『きっといつか分かり合え る日がくるよ』とか何とか知ったような こと言ってくるんだろうけど、私とお母 さんは、きっと一生、このままだ。今お 母さんのお腹の中にいる子と私も、仲良 くはできないだろう。
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