恋愛学園
わかるわけないよね。
嫌な予感はするけど……。
青に目を向けると綺麗な顔を歪めて腹黒王子を睨んでいて、桃也に目を向けると苦笑いを浮かべていて、憂に目を向けると何故かもう既に泣いていた。
どんな想像をしたんだろう。
そして、目の前に来た先生が私と憂の手の中によく見たことのあるピンク色でハート型の二段になっている箱を渡して……いや、押し付けてくる。
そう……学生が持ち歩いていて、お昼に開くものだ。
色形は様々あるけど……なんで、これにしたのかわかんない。
「わからないなら、見本を見せましょうか?私と……芹那さんで?」
「却下」
口を開こうとする前に腹黒王子の発言を一刀両断する声が聞こえてきた。
私の口は閉じていて声を発する訳がなく。
隣にいる桃也の声でもないし、憂の声はこんなに低くない……そうなると、あいつしかいない。
「何で、杜川くんが返事をするのか私にはわからないんですが?」
うん、私にもわからない。
青は、皆が知らないうちに名前を"芹那"に変えたのだろうか?
「会長、自分のパートナーとやりなよ」
「罰ゲーム受ける身分で私に意見ですか、杜川くん」
「会長が自分のパートナーとやらないなら別に自分のパートナーじゃなくてもいいってことでしょ?だって、見本なんだし?」
「それもそうですね。なら、私パートナーとやりましょう。口だけは本当に達者ですね杜川くん」
と目の前で火花を散らしながら鼻が当たってしまいそうな距離で睨んでいる青と腹黒王子。
「……伽恋(カレン)」
伽恋……?
腹黒王子はそう言って人混みの一番前にいる女の子に目を向ける。