恋愛学園
「はい、琉宇さん」
伽恋と呼ばれた可憐で大人しそうな女の人が腹黒王子を呼んで腹黒王子の隣まで来る。
女の恐ろしいほどの視線を全部無視して腹黒王子の隣に来て、そして……勢い良く抱きついていた。
「……琉宇さん!!琉宇さ~ん!!」
あれ……さっきの可憐で大人しそうな女の人は、どこ?
今、腹黒王子の隣にいる人は誰……?
可憐で大人しそうだった人は、腹黒王子に抱きついて名前を連呼しながら腹黒王子の匂いを嗅いでいた。
犬……?
「伽恋、ダメですよ。此処は寮じゃないんですから」
いつも浮かべている笑みよりも柔らかく笑った腹黒王子が伽恋さんの頭を優しく撫でていた。
それを見た周りの女は耳が割れそうなほどにうるさい悲鳴を上げていた。
「琉宇さんがいらっしゃるのに、抱きつかないなんて無理ですっ!」
と言って離れる気のない伽恋さん。
そんな伽恋さんにはきっと憎悪たっぷりの視線が向いてるんだろうな。
あの人、気にしてないけど……。
悪口が言われないのは腹黒王子の権力ってやつなんだろうな……。
理事長の息子だし、生徒会長だし、この学園の王子様らしいし。
この人、敵にしたら退学にされそう……。
てかさ、伽恋さん……見た目とのギャップすごくない?
そう思ってるの、私だけ……?
周りを見渡すと皆見慣れているのか驚いてる様子はなかった。
「……いいから、早くしてよ会長」
腹黒王子と伽恋さんが二人の空間に入ってそうで皆黙っていたのに、一人だけ空気をあからさまに読まない男がめんどくさそうな顔をしながら声を発した青。
「杜川くんは、相変わらず空気を読んでくれませんね。わかってますよ、伽恋手伝ってくれますね?頑張ってくれたらご褒美あげますから」
自分の腕の中にいるパートナーである伽恋さんに優しく微笑みかける腹黒王子。
ご褒美がなんなのかは知らないけど、それを聞いた瞬間に伽恋さんは頬を赤に染めた。
「はい、やります!」
そして、間を置くことなく即答する伽恋さん。
目が……本気過ぎて怖い……。