一度きりの誓いを
「あの…」
「何だ」
相変わらず感情のこもってない声が返ってくる。
それでも私は気にしないよう努めて質問をする。
「恋人のふりをしろってことですよね…?」
「まぁそうだな。お前には婚約者のふりをしてもらいたい」
「つまり、偽装結婚ですか?」
恐る恐る聞いてみると、男性はムッと口を閉じたまま私を見つめてくる。
「…あぁ」
間の抜けた声が返ってくる。
何だか少し引っかかるがそれよりも気になることが口を動かす。
「一つ確認していいですか?」
「…」
ビールを口に運ぶ男性をよそに私は言葉を継ぐ。
「詐欺ろうとか、してません、よね?」
偽装結婚を利用してお金を巻き上げられてしまう詐欺は友達から聞いていた。
それに初めて出会った人とそんな親密な関係にはなれない。
私は男性の返事を待った。