一度きりの誓いを



「滝川さん」

「おう、朝日。で、誰だ?この人」


 駆け寄ってきた男性、その人は私の勤める会社の上司、滝川秀哉(たきがわしゅうや)さんだ。


 私は救われた思いでナンパしてきた男性に目をやる。

 するとその人はそそくさに人混みへ駆けてこの場を立ち去った。



 私たちは顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。


「君と会う時いつもこんなだな」

「あはは…どうしてでしょうね」


 と言いつつ、心の中でため息をついてしまう。



「そういえば、滝川さんも今日お休みなんですか?」

「ん?いや、休憩中にどこかで食事でもと思ってね」


「あ、だったら今からご一緒にどうです?私もお昼まだなんです」


(滝川さんと一緒ならナンパにも困らないし…なーんて)


「へぇ…今日はやけに景気いいね。いつもは誘っても断るのに」

 にやぁっとされ、私はまた苦笑い。


「た、たまには、と思って…はは」



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