CHERRY
意表を突かれたように私が何も言えないでいると、有澤くんは少し考える素振りを見せて、ああ、こう言った方がいいのかな、と呟いた。
「“なに”をじゃなくて“誰”を見ていたの?」
その不敵とも言える笑みに、私は有澤くんの言いたいことを理解してしまった。
途端に、手に冷たい発汗を感じ軽く拳を握る。
ど、どうしよう。
そんな……、他の人に分かられる程に見つめていたのかな。
予期せぬ事態に頭が真っ白になった。