CHERRY
「………は?」
出た声は間抜けなものだった。
けれど相手はそんな私の調子に気づかずに、だってさ、と言葉を続ける。
「オレとふつーに話してるじゃん。あれ、おかしーなあ、二谷さんって男苦手なはずなのに。……もしかしてオレ、男ってカテゴリーされてないとか?」
「そんなこと……」
ない、とは言えなかった。
そう言われれば、彼の言うとおりだと思ったから。
異性は苦手なまま。
彼を男だとも認識している。
強いて言うなら彼と話せたのは勢いっていうか、怒り任せって言うのが妥当だろう。
でも、これをこのままこの人に伝えるのは…ちょっとな。
そう思い、少し悩んで考えついた返事がこれ
「私だって、話かけてくれれば話せるよ」
本心はひとまず伏せ、とりあえず取り繕うような返事をしたら、またふーんと返ってきて、
「じゃあ、これから隣同士だし話す機会はいくらでもあるからな、オレから苦手意識なくしていけばいいんじゃね?」
あ、オレは木野結斗よろしくな!と無邪気な笑顔を見せた彼……もとい木野に胸がドキンと音を立てた。
急に笑ったその顔に、不覚にもトキメいてしまったのだ。