Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
「分かんないよ…。」



私はそう呟くことで、自分の頭の中に浮かんだ嫌な考えを排除しようと試みた。



だけど、蒼はそれを許しはしなかった。



「坂し…。」



「やめて!言わないでっ!!」



蒼の言葉に被せるように叫び、耳を塞いだ。



「何だよ、ちゃんと分かってるんだろーが。

現実逃避、するなよな…。」



蒼は、左手をハンドルから離して、助手席にいる私の頭を小突いた。



「私、そんな覚悟…できてない。」



こんな時間に呼ばれるんだもん、坂下はかなり危険な状態なのだろう。



「覚悟?そんなもの、待ってくれるかっつーの…。」



逃げたい…、今すぐこんな現実から逃げ出したい。



私は、両手を膝の上で握りしめる。



左手薬指にはめられた指輪が、視界に入った。



これを貰った時に、最期まで看取るって決めた。



私はただの『彼女』なんかじゃなく、限りなく『奥さん』に近い立場…っていうつもりでいる。



法律も世間も認めてないし、ましてや坂下にだって…そんな言葉をかけて貰ったことなんて一度も無い。



坂下が知ったら、図々しいって思われるから、このことは口にしたことない。



唇に指輪を押し当てたら、少し落ち着いてきた…と思う。








 


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