Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
「よろしい。

今、アンジェリーナが手にしているものは、人を傷つけるだけでなく、自分をも傷つける凶器です。

すぐに、放しなさい。」



口調は相変わらず穏やかだが、坂下の表情…特にメガネの奥にある眼に厳しさを湛えていた。



坂下の眼力を恐れた私は、坂下から視線を逸らした。



「カミソリで自分傷つける程、ドジじゃないわよ…。」



「傷は、身体だけにつくものではありません。」



じゃあ、心が傷つくとでも言いたいわけ?



「これは、没収させて頂きます。」



坂下はそう言うと、カミソリに右手を伸ばす。



これを取られたら、私は…。



委細構わず、指先でカミソリを振るった。



坂下の右手から、血が流れた。



坂下の顔が、その痛みで歪む。



私の心も…、ちくりと痛んだ。



分かっては…いるんだ、そんなこと言われなくたって…。



「だけど、私にはこれが無いと…。」



掠れるような声で、私は言った。



これが無かったら、私はズタズタにされる…。




 
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