Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
「では、没収はしませんが、校内では二度と使わないと約束してください。」



元々、学校では使うつもりは無かった代物…。



私は、坂下の申し出を了承した。



坂下は、私の手首を掴んでいた左手を放すと、指導室のドアを開けた。



「坂下先生、まだ話は済んでいません。

それに、山田の処分を…。」



「生徒を何時間も拘束する気ですか?

怪我については私の判断ミスに因るものですから、アンジェリーナに対する処分は不要です。」



担任の言葉を、坂下が遮った。



教師を切りつけたのだから、重い処分が下るものだと思ってた…。



なのに、坂下は無罪放免にするというのか?



面食らっていると、坂下に部屋から出るよう促された。



廊下を数歩、進んだところで



「アンジェリーナ。」



坂下に呼ばれた。



「…何?」



「かなり強く掴んだので、手首は痛くありませんか?

手荒に扱って、申し訳ありません。」



カミソリを持ったままの手首を見ると、少し赤くなっていたものの、とりわけ痛いという感覚は無かった。



「別に…。」



私よりも、右手から血を流している坂下の方が痛そうだ。



「あのさ、アンジェリーナなんて名前、長くて呼び難いでしょ?

アンジェで良いよ。

リコや蒼は、そう呼んでる。」



「分かりました。

ではアンジェ、また明日。」



坂下は、先程の手首を掴んだ時とは別人みたいに、穏やかに微笑んだ。







 
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