Angelic Heart 【教師×生徒の恋バナ第二弾】
いつものように夜遅く、家に帰るとアイツだけがいた。



凄く嫌な予感が、する。



「母さんなら、今日は戻って来ないよ。」



アイツが、言った。



その言葉を聞いた瞬間、私は剃刀を手にする。



自分を、守る為だけに…。



そのカミソリには、赤黒いものがこびりついていた。



あぁ、そうか…坂下を切った時に、血を拭うのを忘れていた。



それを見た時に、坂下の痛みに歪んだ顔を思い出した。



その時に感じた、心の痛みがよみがえる。



ちくり、ちくり…。



そのせいだろうか、アイツに対する切っ先が鈍った。



アイツが、手にしたカミソリを払い落とす。



「いつも物騒なものを振り回しやがって…、今日はそうはいかないからな!」



「嫌ああああっ!」



アイツが、私を襲う。



今年のG.W.からされるようになったこの行為、今日で何度目だったか…覚えてない。



お嬢様の梨香が中学までいた学園祭で、マリア像を見たのは、ついこの間のことだ。



梨香が言った通り、私とそっくりだった。



同じ顔なのに、あの像は崇められ、私は汚される…。



いっそのこと、石になりたい。



自ら命を絶つことさえ出来ないでいる私は、叶いもしない願いを心の中で唱えた。



せめて心だけでも、痛みを感じない石になっていたら…。



今日は、汚されずに…済んだのかな?



何で、坂下のことなんか、思い出したのだろう…。









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