【完】そろり、そろり、恋、そろり
店員の帰宅 side:M
薄っすらと存在していたはずの雲も、いつの間にか完全に消えていた。駐車場に停めた車から降りて空を見上げると、眩しいくらいの月明かり。
その月明かりに照らされながら、誰もいない静かなアスファルトの上を1人歩いていく。飲食店勤務は朝はゆっくりだからいいけれど、夜遅いからいけないな。この静かな空間に居ると自分が他の世間とは生活時間がずれていることを思い知らされる。今日だって、すでに午後11時近くになってしまった。今から飲みながら軽食をとって、お風呂に入って……眠れるのは、確実に日付を跨いでから。
あーあ、今日もお肌に悪そう。25歳を過ぎた頃からだったか、夜更かしを嫌うのにお肌が荒れるという理由が大きく占めるようになった。この時間の帰宅が続くと、確実に肌が荒れる。とにかく、化粧のりが最悪になり、仕事に行く事自体がブルーになってしまう。
今日はパックでもして、労わってあげようかな。そんな事を思いながら、部屋へと向かう前に郵便物が来ていないかポストを確認した。
中には封筒が三枚。階段を上がりながら、1つ1つ確認する事にした。
「……あっ、そうか、行くって返事したもんね」
ふと、ダイレクトメールの中に紛れていた一枚の封筒に目が留まり、つい独り言が漏れてしまった。真っ白な封筒に、筆ペンでしっかりと私の名前が書かれている。裏を見ると、高校時代の友人の名前がそこにあった。
片手には郵便物を持ったまま扉の前に立ち、鍵穴に鍵を挿して、ガチャリと回した。
「ただいまー」
……もちろん、「おかえり」なんて返ってくるはずはない。そんな事を言ってくれる人は私には存在しない。それでも、ついつい言ってしまう。一人暮らしが長くなると、独り言が増えちゃっていけないな。
手元にある封筒を見たからか、自分が独身で彼氏もいないって言う事がすごく虚しくて、寂しいものに感じてしまった。
友人から送られてきた郵便物の正体は、結婚式、披露宴の招待状。少し前に、結婚の報告はメールでもらっていた。式に参加してくれないか、と言われた私は、喜んでと即返信した。
その月明かりに照らされながら、誰もいない静かなアスファルトの上を1人歩いていく。飲食店勤務は朝はゆっくりだからいいけれど、夜遅いからいけないな。この静かな空間に居ると自分が他の世間とは生活時間がずれていることを思い知らされる。今日だって、すでに午後11時近くになってしまった。今から飲みながら軽食をとって、お風呂に入って……眠れるのは、確実に日付を跨いでから。
あーあ、今日もお肌に悪そう。25歳を過ぎた頃からだったか、夜更かしを嫌うのにお肌が荒れるという理由が大きく占めるようになった。この時間の帰宅が続くと、確実に肌が荒れる。とにかく、化粧のりが最悪になり、仕事に行く事自体がブルーになってしまう。
今日はパックでもして、労わってあげようかな。そんな事を思いながら、部屋へと向かう前に郵便物が来ていないかポストを確認した。
中には封筒が三枚。階段を上がりながら、1つ1つ確認する事にした。
「……あっ、そうか、行くって返事したもんね」
ふと、ダイレクトメールの中に紛れていた一枚の封筒に目が留まり、つい独り言が漏れてしまった。真っ白な封筒に、筆ペンでしっかりと私の名前が書かれている。裏を見ると、高校時代の友人の名前がそこにあった。
片手には郵便物を持ったまま扉の前に立ち、鍵穴に鍵を挿して、ガチャリと回した。
「ただいまー」
……もちろん、「おかえり」なんて返ってくるはずはない。そんな事を言ってくれる人は私には存在しない。それでも、ついつい言ってしまう。一人暮らしが長くなると、独り言が増えちゃっていけないな。
手元にある封筒を見たからか、自分が独身で彼氏もいないって言う事がすごく虚しくて、寂しいものに感じてしまった。
友人から送られてきた郵便物の正体は、結婚式、披露宴の招待状。少し前に、結婚の報告はメールでもらっていた。式に参加してくれないか、と言われた私は、喜んでと即返信した。